東京高等裁判所 昭和37年(う)332号 判決
判決理由〔抄録〕
本件は被告人が原判示乗用自動車で通称車町交さ点を通過する際に引き起されたものであるが、当時は対面交通の車輛が著しくふくそうし被告人の進路と交さしている横断歩道附近では対面交通の車輛が都電の右側軌道敷内から右側にかけて三列になって停止の状態にあったことが明らかであり、このような場合には、たとえ被告人の進路の信号が青色を現示していたとしても、停止状態にある対面交通の車輛の間隙を縫って、被告人の進路と交さしている横断歩道を横断しようとする者がままあることは、経験則に照らして十分に予測されるところであるし、被告人は都電の軌道敷内で、しかも安全地帯の右側を進行していたものであって、停止状態にあった対面交通の車輛との間隙が僅かしかなく、且つ安全地帯が邪魔になって自由に把手を左に切ることができない状況にあったのであるから、このような場所を通行する際は、自動車運転者としては、前方を十分に注視すると共に適当に速度を緩めて進行し、もって事故を未然に防止すべき注意義務があるものと認めるのが相当である。しかるに、被告人は原判示のように漫然時速約四〇粁の速度のまま進行したため、停止状態にあった対面交通の車輛の間隙を縫って、被告人の進路と交さする横断歩道を横断しようとして被告人の進路の前方に飛び出して来た岩鼻哲夫を発見し、慌てて急制動を施したが及ばず、被告人の自動車に同人を接触させて前方にはね飛ばし、よって同人を死亡するに至らしめたものであり被告人に過失があったと認めるのが相当である。